(株)川島織物セルコンは、このほど祇園祭「橋弁慶山」の前懸を制作、さる5月24日に京都市京セラ美術館でお披露目された。
祇園祭の見どころの一つである前祭・後祭での山鉾巡行では、懸装品や御神体人形、金工品などで豪華絢爛に飾られた山鉾が祇園囃子を奏でながら、都大路を練り歩く。山鉾には、鉾(ほこ)、曳山(ひきやま)、舁山(かきやま)が、今回川島織物セルコンは、舁山の一つ「橋弁慶山」を飾る前懸 「藍地波濤に飛龍文様(あいじはとうにひりゅうもんよう)綴織」 を約5年の制作期間を経て復元新調した。
元幕は、中国・清朝(18世紀前半頃)の官服である綴織の龍砲(りゅうほう)を前懸に仕立て直したものと考えられている。藍色地に波濤と飛龍の図柄が描かれ、瑞雲やコウモリなどが生き生きと表現されており、明治期まで前懸として使用されていた。しかし、長い年月を経た劣化が大部分に見られた。また、左右反転の図柄とは言うものの、裂地の歪みや傾きも多く見られ、左右ともに図柄のない箇所もあり、全面の図柄を再構成する必要があった。
現在、同社で生産する綴織の帯の多くは、1寸間(約3.03cm)の幅にタテ糸が約40本ですが、橋弁慶山の前懸は、1寸間(約3.03cm)に経糸85本という「類例のない細かな綴織」で制作された。また今回の復元新調では、前懸を中央より左右に分け、2人の技術者がそれぞれの織機で織り、最後に繋ぎ合わせるという手法を採用、2枚の裂地の織り寸法と織り表現を合わせるため、2週間ごとに2人の技術者が織機を交代するほか、製織の進捗を細かく記録するなど工夫した。
復元新調された前懸は、今年の祇園祭の山鉾巡行で披露される。橋弁慶山保存会の長谷理事長は「完成した新調幕は、まるで絵画のようで、とても綴織とは思えぬほどの繊細で、素晴らしい出来栄えと思います。明治期以降、約150年以上ぶりに山に掛けられることに喜びを感じます」と語っている。
川島織物セルコンのホームページ
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